2012年は仕事の面では、刑事弁護で今までにない成果を上げたと思う。
逮捕後さらに勾留されて捕まっている被疑者を解放する「準抗告」という手続がある。
勾留や勾留延長は、裁判官による裁判の一種なのだが、それに対して不服を申し立てるのが準抗告だ。
地方裁判所での「判決」に不服を申し立てるのが「控訴」というもので、それと似ている。
この準抗告、いったん裁判官が下した裁判をひっくり返すもので、実は簡単に認められるものではないのだが、
私はいま4連勝中である。
うち2件は、被疑者は罪を犯したことは認めていて、
しかし、身柄拘束が長引くと勤務先を解雇されるおそれもあったという事案だった。
一日も早く外に出すことが大事なので、身元保証人を確保するなどして、何とか2件とも解雇は免れた。
逮捕・勾留の場合の刑事弁護は突然引き受けることになるので、
通常の仕事が終わった後、夜動かなければならないことも多い。
被疑者との接見・事情聴取、ご家族との面談・説明、被害者との示談、準抗告申立書の起案、裁判官面接、
などなど、事案によって動き方も変わるが、とにかく急がなければならない。
あとの2件は、黙秘を指示した事案であった。
「やましいところがないなら黙秘などせず、取り調べにも正々堂々と答えればよい」
と多くの方は考えるかもしれないが、日本の刑事司法の現実はそのような甘いものではない。
まさかと思うかもしれないが、無実の人が自白させられてしまうのが現実である。
(心理学者の浜田寿美男先生の「自白の心理学」(岩波新書)などぜひお読みいただきたい。)
弁護人としても、被疑者に対する説明能力・指導能力が問われる場面である。
ただ「黙秘権があります」「言いたくないことは言わなくてもいいです」と説明するだけでは、
被疑者は黙秘しきれず、結果としてウソの自白調書を取られるのを防げないであろう。
私は、自分なりに工夫を重ねて「黙秘させる」技術を磨いてきたつもりではある。
技術もさることながら、少しでも油断すると自白調書を取られるので、
連日、接見して被疑者を励ますことも大事だ。
この黙秘した2件は、勾留延長後に勾留理由開示や準抗告で反撃に出たところ、準抗告が認められた。
守秘義務があるし、警察・検察にもこちらのノウハウを知られたくないので、詳しくは書けないが、
どちらも自分の戦略が見事にヒットしたと自負している。
もちろん、4件とも勾留は取り消されるべくして取り消されに過ぎないのであって、
その意味では、事件との巡り合わせの結果とも言えるわけではあるが、
弁護人としてやることをやった結果でもあろう。(手を抜けば準抗告は通らなかったであろう。)
無罪を主張していた依頼人は、準抗告が認められて釈放された上、不起訴処分になった。
私は彼の無実を確信しているが、本当に喜んでもらえて、弁護人としても非常にうれしかった。
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