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【ノーモア・ミナマタ第2次訴訟】第6回口頭弁論期日で意見陳述しました。

8月8日、ノーモア・ミナマタ第2次訴訟の第6回口頭弁論期日があり、私は意見陳述を行いました。
意見では、公正かつ機能的な判断基準を立てることが重要であること、原告らの主張する診断基準が公正で機能的であること、を論じた上、裁判所の役割に対する期待を述べました。
今回の期日から、期日後に進行協議も行うこととなりましたが、私の意見陳述は、進行協議に臨むに当たっての原告側の基本的なスタンスを示すという意味もありました。裁判所の問題意識ともかみ合っていたようで、真剣に聞いていただき、続く進行協議でも意見陳述の内容に言及していただきました。その意味では、意見を述べた甲斐もありました。
裁判も正念場にかかってきたと思います。

以下、本文

平成25年(ワ)第554号等ノーモア・ミナマタ第2次国家賠償等請求事件
原告 飯尾正二 外
被告 国 外2名

意見陳述書(第6回口頭弁論期日)

平成26年8月4日
熊本地方裁判所民事第2部合議A係 御中

原告ら訴訟代理人弁護士  菅  一 雄

第1 大量迅速救済には公正かつ機能的な判断基準が必要
 前回口頭弁論期日での裁判所のご意向を受けて、本日は口頭弁論期日後に進行協議が予定されております。水俣病問題の解決に向けた裁判所の積極的な姿勢に心より敬意を表します。
 原告らは、自らを含む「すべての水俣病被害者の救済」のために、司法救済制度を提案しております。多数取り残されている未救済の被害者を大量かつ迅速に救済するためには、中立公平な裁判所の下で、和解手続を利用した新たな救済制度が必要と考えるからです。
 大量かつ迅速な救済のための課題の一つは、公正かつ機能的な判断基準を立てることです。
 では、どのような判断基準が公正で機能的と言えるでしょうか。

第2 診断基準Aを満たせば救済に値するというのが社会的コンセンサス
   水俣病問題では、裁判の内外で、判断基準が争われてきました。
 この訴訟では、原告らは、例えば、曝露要件に加えて四肢末梢優位の表在感覚障害があれば水俣病と認められる、という判断基準を提起しております(診断基準A、平成25年11月12日付け準備書面(病像論1))。
 この診断基準Aと同様の基準を患者が初めて主張したのは、昭和52年11月、水俣病第二次訴訟(昭和48年~60年)においてでした。
 ところが、それに先立つ昭和52年7月に、環境庁は52年判断条件を出し、大量切り捨て政策を開始します。
 そこで、水俣病第三次訴訟(昭和55年~平成8年)は、熊本の水俣病だけで全国の原告が約2000人を超える大型裁判となりました。第三次訴訟は、一審での原告勝訴後の控訴審で、熊本県とチッソも加わった和解協議が行われ、福岡高裁(友納治夫裁判長)は、診断基準Aと同様の基準での司法救済制度を内容とする和解所見を出しました。国の抵抗で和解はならず、平成7年の政治解決となりましたが、そこでの救済基準も診断基準Aと同様の基準でした。
 その後、ノーモア・ミナマタ第1次訴訟や水俣病特別措置法(水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法)では、診断基準A又はB同様の基準を満たせば水俣病被害者と認められることとなり、広がった判断基準で数万人単位での新たな救済が進みました。診断基準Aの公正さには社会的なコンセンサスが形成されていますし、基準としての機能性も実証済みです。

第3 診断基準Aは裁判上でも公正かつ機能的な判断基準たり得る
 では、裁判上でいかなる判断基準が公正かつ機能的でしょうか。
 例えば、平成25年の2つの最高裁判決は、行政認定の是非に関し、52年判断条件を厳しく批判し、総合判断で原告を水俣病と認めました。しかし、同判決は、濃厚曝露を受けた2人の患者を行政認定する方向でそれに必要な判断を行ったものです。多数の原告を抱える本件で総合判断が機能的かは疑問です。本件では本件の原告に即して、公正かつ機能的な判断基準を定立・具体化する必要があると考えます。
 その意味で、原告らは平成26年8月1日付け準備書面(病像3)を提出いたしました。ここでは、疫学的検討の結果、メチル水銀曝露と四肢末梢優位の表在感覚障害の間に「高度の蓋然性」を優に超える極めて高い原因確率が認められること、他の公害事件と比較しても圧倒的に高い原因確率であること、したがって、診断基準Aが公正妥当な判断基準であることを論じております。基準として明確であり、機能性も十分です。

第4 判断基準論の重要性・先決性
 原告らが主張する診断基準BないしEも公正妥当で機能的な基準ですが、とくに診断基準Bは、それ又は診断基準Aにすべての原告らが該当するという意味で、診断基準Aと共に決定的に重要な基準です。
 裁判所で大量迅速な救済を実現するためには、公正で機能的な判断基準を採用することが必要です。また、判断基準論の見通しが立ってこそ、その後の当事者の具体的な主張立証活動の方向性も明らかになり効率化できます。その意味で、判断基準論は本訴訟の争点の中でも重要で先決的な位置づけに立つ論点であると原告らは考えております。そして、本件では、疫学こそがこれまでの裁判で争われ続けてきた判断基準論の決着をつける重要性を持つと原告らは考えております。
 裁判所におかれては、今後の訴訟進行にあたって、判断基準論の重要性・先決性にご配慮いただきますよう希望いたします。
以上
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「終わらない水俣病問題を考える院内集会」で報告してきました。

先週になってしまいましたが、6/16(月)に国会の議員会館で行われた「終わらない水俣病問題を考える院内集会」に参加しました。
集会には国会議員の先生方にも多数ご参加いただきました。(弁護団のHPにご紹介記事を書きました。)
終わらない水俣病の課題を考える院内集会

各被害者団体からも報告がありました。

私は、「チッソによる子会社株式譲渡の問題点~未救済被害者の立場から」と題して報告してきました。

報告の様子

水俣病特措法で、未救済被害者の扱いが認定患者や公的債務よりも劣後する立場に置かれている欠陥を指摘しました。そして、「すべての加害者がすべての被害者へ補償救済する責任がある」という大原則に立つべきこと、今後、チッソによる子会社JNCの株式譲渡に関しては、環境大臣の事前承認(特措法12条1項)が勝負どころになること、環境大臣の責任論が重要になることを指摘しました。

私の出したレジュメをアップしておきます。
「チッソによる子会社株式譲渡の問題点~未救済被害者の立場から」レジュメ
「チッソによる子会社株式譲渡の問題点~未救済被害者の立場から」レジュメ20140616_ページ_1
「チッソによる子会社株式譲渡の問題点~未救済被害者の立場から」レジュメ20140616_ページ_2
「チッソによる子会社株式譲渡の問題点~未救済被害者の立場から」レジュメ20140616_ページ_3

何が悔しいのか~水俣病研究交流集会に関する西日本新聞(1/14)について

水俣病・不知火訴訟弁護士 和解内容に悔しさも 研究交流集会 参加者議論深める

1/13に第8回水俣病研究交流集会に参加して、
「水俣病に時効・除斥なし~ノーモア・ミナマタ訴訟での時効除斥論の到達」
という演題で報告してきました。

報告の主題は、演題の通り、
水俣病に関して加害者らの消滅時効・除斥期間の主張は認められないし、
ノーモア訴訟やその後の被害者の闘いの到達の結果、認められないことがより明確になった、
というものでした。

ところが、なぜか西日本新聞で、主題とはおよそ離れた、質疑応答での私の言葉尻を捉えた報道がなされています。
西日本新聞はまったく理解していないようですが、ノーモアの闘いは、水俣病被害者の闘いの歴史の中で、間違いなく大きな前進を勝ち取ったのです。
ノーモアの闘いが「すべての水俣病被害者救済」を掲げ、他の被害者の闘いと相まって6万人もの被害者を励まし立ち上がらせたこと、95年政治解決までの地域・年代の壁を突破したこと、それにより「さらにどこまで救済範囲を広げるべきなのか」という新たな問題を提起したこと、は紛れもない事実です。他の被害者の方々の闘いももちろん大事な闘いであることはよく承知していますが、救済範囲の拡大の点でノーモア訴訟ほどの成果を上げた闘いはあまりないのではないでしょうか。
もちろん、ノーモアの成果も過去の被害者の闘いの成果の上に得られた成果であることも十分承知していますし、ですから、全ての被害者のたたかいの歴史的な到達と成果でもあります。そして、今後、取り残された被害者の闘いが、ノーモアが提起しながらも解決し残した課題をさらに前進させたときには、ノーモアの闘いの歴史的価値はさらに高まることでしょう。

要するに、ノーモアの到達点は、歴史の中での一つの到達点に過ぎないのであって、「完璧でない」のは当たり前ですし、その意味では「悔しい思い」もあるわけですが、それは新たな容易でない課題に果敢にチャレンジしたからこそだと私は考えています。

原田正純先生は「歴史を動かすのは志を持った少数者」とおっしゃったそうです。
私は「最初は少数者からスタートしたとしても多数者にならない限り本当の意味で歴史を動かすことはできない」と考えます。そして、私のノーモアの闘いの大いなる前進と到達と限界に対する一番の「思い」はそこにあります。

(というわけで、西日本新聞は何も理解していない。というか、何か意図があってあえて曲解したのか?)

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ジャンル : 政治・経済

水俣病は次の闘いへ~2012年を振り返る①

今年も仕事納め。(とはいえ、休みなのは事務所だけで、私は年末年始も仕事しますが…。)

2012年を少し振り返ると、
まず、水俣病では、ノーモア・ミナマタ訴訟和解後の次の闘いの始まりでした。
天草など地域外の被害者をはじめ数万人が救済を求めて新たに特措法申請に手を上げました。
被害の広がりと政府の今までの「被害者切り捨て」政策があらわになりました。
しかし、政府は特措法申請受付を7月末で打ち切り、申請者も「非該当」と切り捨て、
異議申立ても認めないという態度です。
来年は被害者の闘う決意が問われることでしょう。

裁判も終わっていましたので、弁護士は今年は一歩引いていましたが、来年はどうなるでしょうか。

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すべての水俣病被害者の時と立場を超えた団結を!

うちの事務所では「菜の花便り」という事務所ニュースを不定期で発行しています。しばらく前に

「すべての水俣病被害者の救済」を掲げ続ける意味~ノーモア・ミナマタ訴訟の勝利和解と今後の展望

というタイトルの記事を書いたのですが、諸般の事情で発行が遅れて賞味期限切れになりそうなので、
ブログに掲載します。

一番訴えたかったのは、第3段落の<すべての水俣病被害者は団結してたたかい続けよう>のところです。

「すべての水俣病被害者の救済」を掲げ続ける意味
~ノーモア・ミナマタ訴訟の勝利和解と今後の展望
弁護士 菅 一雄

↓以下、本文。

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